福島地方裁判所 昭和56年(わ)141号 判決 1981年10月22日
(一)
本店所在地 福島県会津若松市西栄町六番四三号
法人の名称
入三鋼材株式会社
代表者
代表取締役 前川平八
同
前川平
(二)
本籍 同町三一四番地
住居
同町六番四三号
職業
会社役員
氏名
前川平八
生年月日
大正九年八月二三日
(三)
本籍 同町三一四番地
住居
同市城南町三番三五号
職業
会社役員
氏名
前川平
生年月日
大正一五年四月五日
右三名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中沢正博出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人入三鋼材株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人前川平八を懲役一〇月に、被告人前川平を懲役八月に処する。
被告人前川平八及び被告人前川平に対し、この裁判確定の日から各三年間それぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人入三鋼材株式会社(以下「被告会社」という。)は、福島県会津若松市西栄町六番四三号に本店を置き、鋼材、金物等の販売及び加工修理等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人前川平八は、被告会社の代表取締役として、また、被告人前川平は、昭和五四年九月二六日までは被告会社の取締役として、翌二七日以降は代表取締役として、互いに共同して被告会社の業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人前川平八及び被告人前川平の両名は、共謀の上、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一 昭和五二年七月一日から昭和五三年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が九九五三万七二五六円で、これに対する法人税額が三八六〇万一五〇〇円であったにもかかわらず、架空仕入れを計上するなどして、これによって得た資金のうち大半を現金のままで、残りを金地金に換えて、これらを被告会社本店内の金庫等に保管するなどの行為により、右所得金額中四四八〇万七六一七円を秘匿した上、同年八月三一日、福島県会津若松市城前一番八〇号所在の所轄会津若松税務署において、同税務署長に対し、当該年度の所得金額が五四七二万九六三九円で、これに対する法人税額が二〇六八万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一七九一万六二〇〇円を納期限まで納入せず、もって、不正の行為により同額の税を免れ、
第二 昭和五三年七月一日から昭和五四年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が八八五〇万〇五四八円で、これに対する法人税額が三四一六万八六〇〇円であったにもかかわらず、架空仕入れを計上し、棚卸しの一部を除外するなどして、これによって得た資金を現金のまま被告会社本店内の金庫等に保管するなどの行為により、右所得金額中四一三七万八一四九円を秘匿した上、同年八月三一日、前記税務署において、同税務署長に対し、当該事業年度の所得金額が四七一二万二三九九円で、これに対する法人税額が一七六二万五八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一六五四万二八〇〇円を納期限まで納入せず、もって、不正の行為により同額の税を免れ、
第三 昭和五四年七月一日から昭和五五年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が一億〇四三九万三五三一円で、これに対する法人税額が四〇五五万五一〇〇円であったにもかかわらず、前記第二と同様の行為により、右所得金額中四二三九万七四六五円を秘匿した上、同年八月三〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、当該事業年度の所得金額が六一九九万六〇六六円で、これに対する法人税額が二三六〇万一七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一六九五万三四〇〇円を納期限まで納入せず、もって、不正の行為により同額の税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 鵜飼正美及び松下政雄の検察官に対する各供述調書
一 岩田光之作成の上申書(一九枚綴り)
一 大蔵事務官作成の架空仕入調査書、架空仕入に係る支払手数料調査書及び青色申告の承認の取消通知書謄本
一 検察事務官作成の昭和五六年七月三〇日付け電話聴取書
一 会社登記簿謄本一通及び閉鎖登記簿抄本二通(昭和五二年九月七日及び昭和五四年九月二七日各閉鎖のもの)
一 押収してある請求書一綴り(昭和五六年押第三四号符号三六)
一 被告人前川平八及び被告人前川平の当公判廷における各供述
一 被告人前川平八の検察官に対する供述調書二通並びに大蔵事務官に対する昭和五五年一二月一〇日付け(二〇枚綴り)、同月一一日付け(一三枚綴り)、同月一二日付け(八枚綴り)、昭和五六年一月三一日付け(一四枚綴り)及び同年二月五日付各質問てん末書
一 被告人前川平の検察官に対する供述調書並びに大蔵事務官に対する昭和五五年一二月一〇日付け、同月一三日付け、昭和五六年一月二八日付け(二通)及び同月三〇日付け各質問てん末書
一 被告人前川平作成の上申書
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の簿外通信交通費調査書並びに脱税額計算書及び未納事業税額計算書(いずれも自昭和五二年七月一日至昭和五三年六月三〇日のもの)
一 押収してある総勘定元帳一綴り(同号符号一)、仕入台帳一綴り(同号符号四)、売上伝票一綴り(同号符号四〇)、売上帳一冊(同号符号四三)及び法人税確定申告書一綴り(同号符号四七)
一 被告人前川平八の大蔵事務官に対する昭和五六年一月二七日付け質問てん末書
判示第二及び第三の各事実について
一 内山健の検察官に対する供述調書
一 内山健作成の上申書
一 大蔵事務官作成の期末商品たな卸高調査書
一 押収してある在庫帳一綴り(同号符号三八)
一 被告人前川平八の大蔵事務官に対する昭和五六年一月二九日付け及び同月三一日付け(四枚綴り)各質問てん末書
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書及び未納事業税額計算書(いずれも自昭和五三年七月一日至昭和五四年六月三〇日のもの)
一 押収してある総勘定元帳一綴り(同号符号二)、仕入帳一綴り(同号符号五)、棚卸表一〇冊(同号符号七から符号一六まで)、売上伝票一綴り(同号符号四二)、売上帳一冊(同号符号四四)及び法人税確定申告書一綴り(同号符号四八)
一 被告人前川平八の大蔵事務官に対する昭和五六年一月二一日付け及び同月二四日付け各質問てん末書
判示第三の事実について
一 佐瀬恒男及び河原田イワ子(二枚綴り)作成の各上申書
一 検察事務官作成の昭和五六年七月二九日付け電話聴取書
一 大蔵事務官作成の検査てん末書並びに脱税額計算書及び未納事業税額計算書(いずれも自昭和五四年七月一日至昭和五五年六月三〇日のもの)
一 押収してある総勘定元帳一綴り(同号符号三)、仕入帳一綴り(同号符号六)、棚卸表一二冊(同号符号一七から符号二八まで)、商品入庫帳六綴り(同号符号三〇から符号三五まで)、入荷帳一綴り(同号符号三七)、継手在庫帳一綴り(同号符号三九)、売上伝票一綴り(同号符号四一)、売上帳一冊(同号符号四五)、法人税確定申告書一綴り(同号符号四九)及び仕訳帳一綴り(同号符号五二)
一 被告人前川平八の大蔵事務官に対する昭和五五年一二月一一日付け(一一枚綴り)、同月一三日付け及び同月一七日付け各質問てん末書
一 被告人前川平八作成の上申書
一 被告人前川 平の大蔵事務官に対する昭和五五年一二月一一日付け質問てん末書(六枚綴り)
(法令の適用)
被告会社の判示各所為は、いずれも、昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一項(七四条一項二号)に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金一五〇〇万円に処することとし、被告人前川平八及び被告人前川平の判示各所為は、いずれも、行為時においては昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一五九条一項(七四条一項二号)、刑法六〇条に、裁判時においては右改正後の法人税法一五九条一項(七四条一項二号)、刑法六〇条に該当するが、右は犯罪後の法律により刑の変更があったときにあたるから、同法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、被告人前川平八及び前川平について、以上はそれぞれ同法四五条前段の併合罪であるから、いずれも同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人前川平八を懲役一〇月に、被告人前川平を懲役八月に処し、被告人前川平八及び被告人前川平に対し、情状によりいずれも同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から各三年間それぞれの刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 山室恵)